日記(職場、親族、言語、焦燥)

・この秋は、いい仕事に関わることができて嬉しかった。リスペクトフルな現場だった。スケジュールだけがひどかった。

・親戚に会った。戸惑ってはいたけど、否定的なことは言われなかったのでほっとした。おでんを食べて日本酒を飲んだ。

・仕事用メールにフルネームの署名を設定した。業務上、特に問題なかったので、今まで名字だけ書いていた。社会人失格だと思われるのと、会ったこともない他人から女性だとみなされること、どっちを取るかといったら迷わず前者だった。前の職場はまあまあカッチリしたビジネスメールスタイルだったけど、自分がどういう署名を付けていたのか思い出せない。

・たまに自分を指して「あの男性は」「いや彼女は女性だよ」みたいなやりとりが発生する。以前からの知り合いで、私からトランジションについて伝えていない人が善意で「訂正」してくれる。トランスあるあるだと思う。ややこしさが増すのは、その場での使用言語が手話のとき。日本手話は三人称でハッキリ男女の区別がある。ニュートラルな表現も考えられてはいるけど、日常に浸透しきっているとは言い難い。狭いコミュニティだし、女性だと思われたくないから早く訂正したいけど、私の手話力では自力で訂正して回るのは不可能なので、急ぎ協力者を見つけなければいけない。

・主治医が精神の薬の処方量を、成人男性の基準値で決めていた。一応ホルモン関係の事情は伝えてはいる。「体重なんかにもよりますが」と言っていた。そういうもんなんだ。

・言語について考えている。言語間の権力関係、言語とアイデンティティ、世代・コミュニティ間の伝達とか。きっかけが複数ある。社会言語学。とっちらかっている。日本手話と英語の勉強は続けている。

パレスチナで起きているジェノサイドについて、調べたり、プロテストを遠巻きに見たり、少しだけ仕事的に関わったりして、あとは? 友人たちのことを思って胃の底が波打つ。ずっと見ていなかったfacebookにログインしてしまう。

・食べるもの、特に栄養価への固執が強くなっている。会食恐怖? 出勤の日は健康的な手作り弁当を持参して、休憩コーナーの特等席、他人が視界に入らない窓際で食べる。他にも席はあるけど、近くに人がいると食べられないから、窓際が空くまで待つ。当然休憩時間は短くなってイライラする。料理の腕は随分上達した。太り方が内臓脂肪型になっている。

・自分は何をしているんだろう、何かしなければいけないという焦燥感と、結局何もできてない虚無感を交互に感じてただ時間が過ぎる。誰かと話をしたいけど誰とも会いたくない。私ごときに時間を費やさせるなんて申し訳ない。社交性は底をついたが体力がついたので、よく知らない人との上っ面の会話はむしろスムーズにできる。あー、学生時代にそれを続けていたらパンクしたんだった。でも会いたい人たちもいる。会いたいです。