ホルモン治療と身体改造

胸オペの傷も落ち着いて改名も済んで必要な範囲へのカミングアウトも済んで、やれやれと思う間もなくホルモン治療を開始しました。2週に1回の注射です。まだ数回しか打っていないとはいえ確実に作用は出ていて、ひとまず食欲性欲亢進と皮脂の過剰な分泌。食欲については特に、摂食に異常ありパーソンとしてはかなり困惑しています。御せていない。でも吐いてもいないのでえらいです。あと、妙に活動的な気持ちになっている。これは軽躁状態にも似ていてよくわからない。単に仕事が忙しくて神経が昂ぶっているだけかとも思う。

職場の人たちに、入院に続きホルモン治療を始めたことを伝えたら協力的で、中には先回りして的確な対応をしてくれる人もいた(今後代名詞はどうしたいかとか、ホルモンバランスの変化で体調を崩すこともあるだろうからすぐに言ってくれだとか)。すごい。本当に頭が下がります。私のことをずっと「彼女」呼びしてきた人にも都度訂正を入れ続けること数ヶ月、最近は慣れない感じで「……っこの人が」とか言ってくれている。がんばれ、その調子だ。声が低くなってきたら混乱が生じるから頼みます。

ここまで怖いほどスムーズ。これまでの躊躇はなんだったのかというくらい典型的なステップを踏んで進んできたし、なんなら自分が取ろうと思っていた手札は出し尽くしている。

その上で、自分は「性別をトランスしている」というより「身体改造している」というほうがしっくり来る。タトゥーとかピアスホールの拡張とかに近いかも。激しめの筋トレをする人もそうじゃないのかな。どれも本格的にしたことがないので的確な表現なのかはわからないけど……(それはそれとしてタトゥーはしたいと思っている、いつか)

ひとに理想の体の形があるとして、それは私にとっては女性的でない身体です。だけどもっと言えば、性別という尺度から外れることが第一で唯一の目標で、その考えは昔も今も変わらない。だから男性として埋没するとか、女性から男性への移行ってのは求めていない。でも結果としてトントン拍子で男性化まっしぐらな現状、「男性になりたいわけではない」という言葉の説得力がなくなってきてる気がする。わからない。説得力なんてなくてもそうなんだって言い切りたい。いや許可はいらない。でも私の中の許可が下りない。

そもそもホルモン治療に急な舵を切ったきっかけが、事情を知らない人からの女性扱いに耐えられなかったからなのですが、じゃあ男性扱いしてほしいのか?と聞かれると困る。結局この世は二択でしょ?女性とみなされることに泣くほど拒否感を抱くのなら、残された選択肢は男性一択じゃないですか。仕方がないじゃないですか。それに嬉しいでしょ?テストステロンの値が上がることで現れる変化。いや、別に、諸手を挙げて嬉しくはないです。そうなの?じゃあ何で?女性じゃなくなるって男性になるってことでしょう?違います。違うって言ったら違います。

私、永遠にこの自問自答を続けるんだろうか。考え方も不安も二元論の社会も変わらないまま、私の体だけが変わっていきます。