普通の日記(遠出してジンを買ったり読んだりした話)

 

新しく処方された薬の副作用で、両腕を挙げてうつ伏せで寝てしまったときのような/脚を組んでちょっと変な体勢で座っていたときのような/大きな声でしゃべり続けたときの頬のようなしびれが両手両足顔面にあって、致命的な支障じゃあないんだけれども、でもそのしびれは私に自分の一挙手一投足を意識させる。

 

良く晴れた初秋の平日の午後、静岡三島のCRY IN PUBLICというオルタナティブ・スペースに行ってきた。

以前から知人が言及していて、いつか私も行きたいなと思っていたところ、機会ができてお邪魔することになったの。

あちらこちらが錆色なのに人も車も往来があって不思議と息をしている町のアーケードを抜けて少し行ったところにあるそのスペースは、たくさんのジンや本やレコードやイラストやパッチやワッペンやその他作り手書き手の思いがぎゅうぎゅうに詰まった場所だった。

迎えてくれた方は「泥水みたい」なあったかいお茶を入れてくれて、私たち訪問者は立ったり座ったり古本を物色したり棚の中のジンの裏表紙に知ってる名前を見つけたり、とにかく気ままに過ごした。ちょうど会場ではカナイフユキさんの個展をやっていて、イラストとグッズが並んでいた、友人が彼のジンを買ってくれた。自分でも、呪詛、というタイトルのジンを買った。

それから、ちまちまと作っては売っているSMASH THE CIS-TEM(シスジェンダー中心主義ぶちこわそうね)パッチを何枚か置かせてもらった。

 

深夜家に帰って、しびれる手足を放り出しながら昼間買ってもらったジンを読んだ。映画や芸術、日常のことが書かれた小さな紙束を眺めながら、自分がジンを作るなら交換日記みたいにしたい、それか日付のない絵日記、もしくは読む順番のわからないまんがとか、考えていた。

寝る前に枕元にクロッキー帳を持ってきてらくがきをした。しびれる手では握力が出せなくて、ペンはふるふる震えてしまって、ただでさえ嫌いな自分の絵が到底許せる出来にはならなかった。

 

ジン、読者1号は作者である。日記でもまんがでもきっと素敵だが、まずは自分で好きになれるジンにしたい。